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リヴァプールFCの6番
日本代表でキャプテンを務める遠藤航。ブンデスリーガでは2年連続デュエル王に輝くなど評価を高めた。30歳にして世界的ビッグクラブの一つであるリヴァプールFCへ加入が決定。クロップ監督の信頼をがっちりと掴み、見事レギュラーを獲得すると、世界屈指のアンカーとしてその名を轟かせている。
2022カタールW杯ではキャプテンを務めた。スペインとドイツと同居する死の組を首位で突破し、ベスト16進出を達成した日本代表の要として活躍した。
本記事では、そんな遠藤航のプレースタイルや経歴、プロフィールを解説する。
世界屈指のアンカーになるまで
2010~2015 湘南ベルマーレ
Embed from Getty Images湘南ベルマーレU-18から昇格した遠藤航は、1年目から34試合に出場した。チョウキジェ監督の信頼をがっちりと掴み、翌年、19歳にして、キャプテンとPKキッカーを務めた。
2016~2018 浦和レッズ
Embed from Getty Images2015年12月23日、浦和レッズへ完全移籍することが発表された。3CBの一角としてレギュラーを獲得し、時には右SBを務めた。守備的なポジションであればどこでも高いレベルで務める万能性からチーム内で重宝されていた。
2018~2019 シント・トロイデン
Embed from Getty Images2018年7月21日、ベルギー1部のシント・トロイデンへの完全移籍が発表された。8月5日、ベルギー1部リーグ第二節KRCヘンクとの試合でデビューを果たし、移籍後初ゴールを決めた。プロキャリアの殆どでCBを務めてきたが、ベルギー移籍後はボランチとしてレギュラーを獲得した。最終的に、29試合に出場して2得点を記録した。当時、チームメイトだった鎌田大地、富安健洋とともにチームを牽引する活躍を見せた。
2019~2023 シュツットガルト
Embed from Getty Images●2019-2020→21試合1得点2019年8月13日、ドイツ2部に所属するシュツットガルトの期限付移籍が発表された。シーズン序盤は出場機会を得られず、ベンチを温める日々が続いた。
11月13日、ブンデスリーガ2部第12節のディナモ・ドレスデン戦で待望の移籍後初出場を果たした。第13節カールスルーエ戦で移籍後初先発を飾り、アンカーとして攻守に大車輪の活躍を披露し、以降レギュラーに定着した。
不安定だった守備を安定させる役割を務め、2年ぶりの1部昇格に大きな貢献を果たした。ちなみに、ドイツ誌『kicker』によるブンデスリーガ2部のベストイレブンにも選出された。
●2020-2021→33試合3得点
2部で確かな爪痕を残した遠藤航は、1部でもその実力が確かであることを証明してみせた。第23節のシャルケ戦でブンデスリーガ初ゴールを含む2得点を挙げ、チームの勝利に貢献した。また、各国から屈強な選手が集まるブンデスリーガにおいて、リーグ最多デュエル記録を残した。
●2021-2022→33試合4得点
シュツットガルト公式Twitterより、キャプテンに就任することが発表された。チームは残留争いに苦しむも、最終節の1.FCケルン戦、遠藤が後半アディショナルタイムに値千金の決勝ゴールを叩き込み、土壇場でチームを1部残留へと導いた。また、2年連続でリーグ最多デュエル記録を残した。
●2022-2023→33試合5得点
前年に引き続きキャプテンを務めたこのシーズン。昨季同様残留争いに巻きこまる苦しいシーズンとなり、最終的にハンブルガーSVとの1部2部入れ替え戦に挑んだ。遠藤はフル出場で、2戦合計6-1でハンブルガーSVを下し、チームの1部残留に大きな貢献を果たした。ちなみに、デュエル記録ではリーグ4位を記録し、惜しくも3年連続のリーグ最多デュエル記録は逃す結果となった。
2023~2024 リヴァプール
Embed from Getty Images2023年8月18日、リヴァプールFCへの完全移籍が発表された。翌日8月19日、プレミアリーグ第2節ボーンマス戦にて移籍後初出場を果たした。
加入後すぐの時期は、プレミアリーグ特有のスピード感と強度の高さ、リヴァプールで求められるタスクに対して、適応に苦しみ、途中からの出場が多かった。
そんな苦しい時期を乗り越え、完璧な適応を見せた遠藤はレギュラーを獲得し、ドミニク・ソボスライ、アレクシス・マック・アリスターとともに中盤を形成した。最終的に公式戦44試合に出場し3得点1アシストを記録するなど、チームに欠かせない存在となった。
遠藤航はなぜボールを奪えるのか?
リヴァプールFCのアンカーとして活躍する遠藤航の強みは、中盤におけるボール奪取能力にある。
遠藤は、なぜボールを奪えるのか、その要因として以下4点の要素が挙げられる。それぞれの要素について、詳しく深堀してみよう。
●予測力
遠藤のボール奪取における凄みは、抜群の予測力にある。
特に、相手選手の、パスを出すタイミング、パスコース、ドリブルの進行方向に対する予測が素晴らしく、対人守備の局面でボール奪取に繋げられる。
遠藤航は、ボール奪取の極意について、以下のように語っている。
「ボールを奪うのは、本当にその前が全てだと思っているぐらい、予測力や、パスが出てくる前に良いポジションを取っているとか、そういうのが大事。相手がボールを持つ前、駆け引きがすごく大事だと思います。身体の向きとかを見て、『この選手は、ここでボールを受けたいのかな』とか。『パスする選手は、ここからこういう風にパスをしたいのかな』みたいなのは、常に見ながら予測しています」
●危機管理能力
遠藤航は、危機管理能力に長けた選手だ。自チームの攻撃時、ボールを奪われた後の被カウンターを想定したポジショニングを常に取り続ける。
セカンドボールの回収、カウンターの芽を摘む戦略的ファウル、攻守交替の瞬間に相手からボールを即座奪還で、相手からの被カウンターを潰すだけでなく、自チームが厚みある攻撃を繰り替えことを可能にしている。
モハメド・サラー、ルイス・ディアス、ダルウィン・ヌニェスなど強力な攻撃陣を擁し、前線から積極的にハイプレスをかけ続けるリヴァプールFCにおいて、遠藤航の危機管理能力はピタリと適合した。
ハイラインを敷くリヴァプールFCでは被カウンターの機会も多いが、控えめな攻撃参加で被カウンターに備える遠藤がいることで、味方選手は守備のために長距離を走り帰陣する必要がなくなり、そのエネルギーの多くを攻撃に割ける。
●当たり負けしない体の強さ
フィジカルコンタクトの局面において、当たり負けすることが滅多になく、体が強い。
体格は、フィジカルコンタクトの勝率を左右する重要な要素の一つだ。一般的に、身長が高く、体重が重い選手ほど、コンタクトは強い傾向にあるが、遠藤航はその傾向には該当しない。
身長178cm / 体重は76kgであり、極めて平凡な体格ながら、ブンデスリーガでやプレミアリーグでもほとんど当たり負けすることがない。
●鋭い寄せと強烈なタックル
まるで忍者のようにスルスルと相手選手に近寄り、自身の間合いの中に相手を捉えると、次の瞬間には強烈なタックルでボールを奪う。
前所属のシュツットガルトやリヴァプールFCでのボール奪取のシーンを見ると、そのようなシーンが多くみられる。
遠藤は、相手選手に気づかれる前に近くまで距離を詰めているため、相手としては構える時間すらなくタックルを受けることになる。
体格差がある相手選手を弾き飛ばしてボールを奪えるのは、遠藤独特の守備方法が影響しているのではないかと筆者は考察している。
ゲームメイクや攻撃参加はあまり得意ではない
6番の位置、いわゆるアンカーを本職とする遠藤航は、守備で能力を発揮する選手。ゲームメイクや攻撃参加については、平均レベルだと言える。
とは言え、守備力を武器とするアンカーの選手として考えれば、ゲームメイクや攻撃参加の能力は決して低くはない。違いを出せるほどではないものの、卒なく熟せる選手だ。
リヴァプールFCでは、2CBの間にポジションを下げて、ビルドアップに加わる。GKやCBからパスを引き出し、左右前方へパスをつける。
中盤の位置でボールを引き出す動きも積極的に行う。味方選手が出しどころに困るシーンでは、逃げどころとしてサポートに入る動きを見せる。ボールキープ能力も高く、複数選手に包囲されても、体でうまくボールを隠して、正確に味方へとパスを繋ぐ。
ボール奪取後、味方につけるプレーも得意としている。奪った後、攻撃の起点になる縦パスや空いているスペースへの持ち運び、背後へのスルーパスなど、局面を打開するプレーは1級品だ。
2024-2025シーズンに向けて
リヴァプールFCで2年目を迎える2024-2025シーズン。遠藤獲得を熱望したクロップ監督の退任、スロット新監督の就任に伴い、31歳のMF遠藤航の起用方法や序列に変化が現れるだろう。リヴァプール2シーズン目で、どのような活躍を見せてくれるのか注目したい。